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【解説】アクリル系粘着剤の特徴と用途、利点・注意点を解説

アクリル系粘着剤

アクリル系粘着剤は、透明性・耐候性・耐熱性に優れた粘着剤です。原材料の種類が豊富であり、重合操作で分子量の調整も可能なことから、狙った特性の粘着剤を設計することが可能です。設計自由度の高さを活かして、私たちの身近なテープに広く使用されています。

アクリル系粘着剤の特徴

アクリル系粘着剤は、アクリル酸エステルを主成分として合成された粘着剤です。アクリル酸エステルの種類が豊富で、適切に設計することで目的に合った粘着剤を作ることが出来ます。強粘着から微粘着まで幅広く設計できるため、貼りつけたら剥がれない固定用テープから、すぐに剥がせる保護用テープまで、さまざまなものに使用されています。

ゴム系粘着剤・シリコーン系粘着剤は、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)など、粘着性を調整する成分が必要ですが、アクリル系粘着剤はそれ自体で粘着性を持ち、ものに貼りつくことができます。主成分単体で粘着性を有してはいますが、低温環境下や、ポリプロピレンなどの低極性・低表面エネルギーの被着体へ貼りつくことが難しい面があり、弱点緩和を目的に粘着付与樹脂を混合することもあります。

アクリル系粘着剤

アクリル系粘着剤には溶剤型・エマルジョン型・無溶剤型の 3つの種類があります。

溶剤型アクリル系粘着剤

溶剤型アクリル系粘着剤は、アクリル酸エステルの共重合体、場合によっては粘着付与樹脂などの添加剤を加え、有機溶剤に溶かした粘着剤で、溶剤を揮発させることで、粘着物性が発現します。一般的には溶液ラジカル重合によって合成されており、Tg(ガラス転移温度)や分子量および分子量分布を変化させることで、粘着性能を調整します。耐熱性や耐候性に優れており、長期にわたって安定した特性を得ることができます。

ポリマー成分には官能基を導入しており、粘着物性をさらに向上させるために硬化剤(架橋剤)が用いられます。多種多様の硬化剤があり、欲しい特性に応じて使い分けがされています。また、溶剤量を変化させることで、固形分量や粘度調整を比較的容易に行えるため、さまざまな厚みで加工でき、5~10μmといった薄膜塗工も可能です。

一方、溶剤を含むため、引火の危険性や、揮発性有機化合物による人体や環境への悪影響が懸念されます。使用時には十分な換気を行なうなど、作業場所の安全管理に配慮する必要があります。

エマルジョン型アクリル系粘着剤

エマルジョン型アクリル系粘着剤は、粘着剤成分を水に分散させた粘着剤です。有機溶剤の代わりに水を使用した粘着剤で、環境に優しく、安全性の高い粘着剤とされています。主に乳化重合で合成されており、水中に分散された粒子内で反応が進むため、高分子量化が容易であり、ゲル分(溶剤に溶けない成分)を含むため、凝集力の高いポリマーが得られます。従って、硬化剤を使用しない一液での設計も可能です。

一方、乳化剤(界面活性剤)・防腐剤などの非粘着成分を使用するため、溶剤型と比較すると、耐水性や耐湿性などの粘着性能に劣る部分があります。また、使用可能な粘着付与樹脂の種類が少なく、性能の調整余地は大きくありません。さらに、溶剤型と比べると、乾燥効率が悪くなり生産性の低下も懸念されますので、対策を考慮する必要があります。

無溶剤型アクリル系粘着剤

無溶剤型アクリル系粘着剤は、紫外線によって硬化する有効成分100%の粘着剤です。エマルジョン型粘着剤と同様、溶剤を使用しておらず、環境負荷が小さいです。また、揮発成分を含まないため、一度の塗工で粘着剤層の厚膜化が可能です。UV重合型およびUV架橋型があり、中でもUV重合型は、高分子量化が可能であり、分子設計の自由度が高く、耐熱性や耐久性を向上させることが可能です。

無溶剤型は紫外線で硬化を行なうため、UVランプの種類や照射量など、硬化にかかわる各種条件設定も重要な要素です。また、専用設備が必要となるため、設備導入コストなどに配慮する必要があります。さらには、未反応モノマーの残留は、強い臭気を発生させる原因になるため、注意が必要です。

主な用途

保護用フィルム、光学用フィルム、養生用テープ、両面テープ、フォームテープ、部品固定用テープ、一般用ラベル、食品用ラベルなど

アクリル系粘着剤の利点と注意点

アクリル系粘着剤の利点・注意点は以下の通りです。

利点
  • 設計の自由度が高い

    アクリル酸エステル・粘着付与樹脂・硬化剤など、各種原材料の種類が豊富、かつ重合操作により、低分子量から高分子量まで調整可能であることから、狙いの特性を意図した設計が可能です。

  • 粘着力の調節が容易

    強粘着から微粘着まで設計することができるため、永久接着から再剥離用途まで設計可能です。

  • 耐候性が高い

    太陽光・温湿度・雨などの自然環境による影響を受けにくく、屋外での使用も可能です。

  • 透明性が高い

    透明性に優れており、変色しづらいです。光学用途など、透明性が必要な箇所での使用に適しています。

  • 金属への粘着力が強い

    鉄やアルミニウムなど、金属素材との相性が良く、優れた粘着特性を発揮します。

注意点
  • プラスチックへの粘着力が低い

    極性が高いため、ポリプロピレンなど、低極性・低表面エネルギーの難接着素材へは貼りつきにくいです。

  • 低温環境下での貼りつきがよくない

    Tgの影響により、低温環境において流動性が低下し、べたつきが減少、被着体への貼りつき性に影響があります。

  • ゴム系粘着剤と比べると高価

    ゴム系粘着剤と比較すると、価格が高いです。

耐熱性・耐候性・透明性が必要な箇所にはアクリル系粘着剤の使用が推奨されます。また、アクリル系粘着剤は、価格性能比のバランスが良く、設計の幅が広いため、ご要望に沿った粘着剤の提供が可能です。

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